An intermediate support organization to develop human resources for art management professionals of Performing Arts, and to enhance their working environment.
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国の特別天然記念物・コウノトリが自然放鳥されている兵庫県豊岡市では、現在、その豊かな地域資源を生かし、地域住民と一緒に魅力あるまちづくりに取り組む「豊岡市地域おこし協力隊」を募集しています。その中で、城崎国際アートセンター(KIAC)では、パフォーミングアーツを活用した地域の活性化に取り組む方を募集中です。毎年さまざまな国内外のパフォーミングアーツのアーティストがKIACに滞在し、作品を創作。ここから世界ツアーに旅立つ作品も多数生まれてきました。今回の募集にあたって、KIACプログラム・ディレクターの吉田雄一郎さんにお話を伺いました。
A1KIACは、舞台芸術に特化した滞在型の創造活動、いわゆるアーティスト・イン・レジデンスの拠点です。美術系のアーティスト・イン・レジデンスの施設は比較的あると思いますが、舞台芸術に特化しているというのは全国的にも、かなりめずらしいと思います。ここでは年間を通して創作活動が行われています。
施設としてはホール、6つのスタジオ、そして最大22名までがレジデンスできる宿泊施設で構成されています。毎年春に国内外に公募をかけてアーティストを選考し、選ばれたアーティストには実際に城崎に滞在し創作を行ってもらいます。普通の劇場や稽古場施設は22時位までで閉館してしまうところが多いと思いますが、ここに滞在しているアーティストは施設を無料で24時間使用することができるので、創作に集中することができます。また、滞在アーティストには創作の過程を地域の方々に公開してもらうことを条件にしていまして、ショーイングやトークなどを「地域交流プログラム」として行ってもらい、ここでの創作活動が地域の人達にも開かれるようなしくみになっています。
たとえば今年度ここで滞在創作した一例ですと、KIACの芸術監督でもある平田オリザさんの青年団と、韓国の演出家ソン・ギウンさん率いる第12言語演劇スタジオと合同での『新・冒険王』、岡田利規さんの『God Bless Baseball』、ダンサーの白井剛さん×ピアニストの中川賢一さん×映像クリエイターの堀井哲史さん(ライゾマティクス)の3名のコラボレーションなどがあります。また、国内と海外のアーティストが実は半々くらいで、海外ですとカナダ・ケベックを代表する振付家のダニエル・レヴェイエさん、それから京都の山下残さんとルーマニアの振付家のコスミン・マノレスクさんによるコラボレーション作品の創作などがここで行われました。
KIACのアーティスト・イン・レジデンスの特徴として、必ずしも完成を求めないということがあります。滞在中に、作品の完成まで行くアーティストもいれば、滞在中にリサーチをし、アイデアを練ることに時間を使う方もいます。城崎での滞在をどのように使うかはアーティストにお任せをしています。
A2KIACは今年から市が直接運営を行っています。普通であれば、市との間に文化財団や振興財団などが入って、そこが運営を請け負う場合が多いと思うのですが、KIACのように市の直轄というのは珍しいのではないでしょうか。実は城崎のある豊岡市には大学がありません。なので、豊岡市で高校を卒業しても進学先がないので、若年層が都市部に流れて行ってしまい、若い人たちが減っています。そうすると地域の活力も失われていってしまいます。そこで、アートに力を入れることで地域の魅力に繋がっていくのではないかということで、豊岡市は芸術文化の振興にすごく力を入れているんです。
城崎の魅力といえば、やはり温泉ですね!城崎町のなかに7つの外湯があるんですが、KIACにレジデンスしているアーティストは一時的に町民と同じ価格の100円で温泉に入ることができます。舞台芸術のように、身体を使うアーティストにとっては、毎日温泉に入ってリラックスできるというのはとても大きなメリットになります。また、ここで働くスタッフも、仕事帰りに温泉に入れることはリフレッシュになると思います。また豊岡市には神鍋高原にスキー場があったり、海水浴ができるビーチがあったり、とにかく自然に恵まれていますね。
A3もともと「地域おこし協力隊」というのは総務省が実施している制度で、人口減少や高齢化などが進んでいる地域に、その地域以外の人を受け入れ、地域協力活動を行ってもらい、定住・定着してもらうことで地域の活性化につなげていこうというものです。豊岡市は2014年度から開始して、現在5名の地域おこし協力隊の方々が活躍しています。そもそも地域外の方を受け入れる制度なので、協力隊の方々は県外の方がほとんどです。今活動している方では、東京や千葉などの首都圏出身の方が多く、また以前は先生をやっていた方などもいるようです。逆に今住んでいるところが地方だと、今回の応募は難しい場合もあるようなんです。あくまでも地域を活性化するための制度なので、自分が住んでいるところが要件を満たしているかどうかはウェブサイトで確認してみてください。
今回の豊岡市全体での協力隊の募集は10名なので、自分以外にも9名の人達が一緒に豊岡市内で新生活をスタートすると思えば、仲間がいて心強いのではないでしょうか。また、協力隊の方々は、協力隊の方同士の横のつながりがあります。この市内外の横の繋がりと、KIACを媒介にした舞台芸術関係のネットワークを繋げて行くことで、新しい関係性を作り出して行くことが出来るんじゃないかと思います。
また、報償は月額166,000円なので少なく感じるかもしれませんが、実は家賃、車、パソコンは市が借り上げたものを貸与されるんです。家賃がかからないということを考えると、それなりにやっていける額だと思います。また、最初に家を探すのは大変だと思いますが、市が探してくれるので、バックパッカー的に身体ひとつで来ても、とりあえず新生活が始められると思います(笑)
A4海外からのアーティストも多いので、メールや日常会話で差し支えないレベルを希望します。ただ、他の応募者との相対的な判断になりますので、もし本人的に英語に自信がなくても、他の特技やスキルなども伺った上で、こちらで検討させていただきます。もし英語に自信が無くても他のスキルでアピールできるものがあるということでしたら、まずは応募してみていただければと思います。
とはいえ、現在働いているスタッフ全員が英語ができるというわけではありません。だからこそ、新しく入ってくる方には英語力を期待しています。城崎には外国人観光客も多く、KIACの中でも外でも英語が使える場面は多々ありますので、語学のできる方には使いどころの多い環境だと思います。
A5 こちらは英語力ほどは問いません。もちろん経験があるにこしたことはないですが、これからパフォーミングアーツの企画に携わっていきたいという情熱がある方であれば、現在のところは未経験でも構いません。ただやはり仕事として関わっていきますので、パフォーミングアーツや他のアートの分野に興味や関心があって、これから関わっていきたいという意思や情熱を持っているということは重要だと思います。
A6常駐スタッフは7人います。館長のもと、総務担当の豊岡市の職員1名、プログラム・ディレクター1名、アート・コーディネーター(制作)1名、豊岡を拠点に活動するNPO法人プラッツからテクニカルスタッフとして2名、レジデンスのサポートとして1名の計7名です。イベントの時は市の職員の方などが手伝いにきてくれたりもします。7名いるスタッフは、任期付きのスタッフもいれば、業務委託もおり、市から出向している人もおり、業務形態がバラバラなんです。でもチームの一体感があり、事務局の雰囲気としても楽しい職場です。ちなみに、館長は豊岡の出身でその後東京で働いていたのでUターン、私は豊岡の隣町の出身なのでJターン、コーディネーターは大阪出身なのでIターンですね。
最初に創作環境として24時間施設が使えると言いましたが、基本的には夜間の使用はアーティスト自身に管理を任せていますので、スタッフが泊りこみになったりすることはありません。スタッフの勤務時間帯は8:30-17:15です。普通の劇場だったら考えられない時間帯ですよね(笑)イベントが立て込んでいる時は少し遅めに来たり、夜まで仕事があることもあります。ちなみに温泉は朝7時からやってますので、温泉に入ってから出勤することも可能ですよ。
それから、城崎町は人口が4,000人しかいません。チラシを配りに街に行ったりすることもありますが、地域の方々の顔が見えるんですよね。KIACで「地域交流プログラム」を企画すると、頭のなかでは何となく来てくれる層が分かるんです。あの人とあの人あたりが来るな、みたいな感じで。昨年、舞踊評論家の乗越たかおさんにトークをしていただいたんですが、60人くらい集まったんですよ。4,000人の人口で60人ってすごいですよね(笑)
A7英語力やコーディネーターとしての能力もあるにこしたことはありませんが、やはり、情熱や責任感、地域の方と積極的に交流していくコミュニケーションスキルを期待したいですね。そういうものがベースにあったうえで、型にはまらない考え方をできる方、KIACに新しい風を吹かせてくれるような方が来てくださると嬉しいです。例えばデザインの能力などがあれば、そういった個人のスキルを、この舞台芸術のアートセンターで活かしていくことも可能です。
ただ、やはり多くの文化芸術のイベントは大阪や京都などの都市部で行われますので、豊岡ではどうしてもそういったものを身近で見ることの出来る機会が限られています。兵庫県内でも、瀬戸内海側と日本海側での文化格差があります。そういった格差を解消するためにも、KIACは頑張っていきたいと思っています。また、先程お話しました通り、これまでは毎年春に公募で滞在アーティストを募っていたのですが、来年度からは主催事業として自分たちで企画を立てていこうという計画もあります。こういった主催事業にももちろん関わっていってほしいですね。
この「豊岡市地域おこし協力隊」での採用は城崎国際アートセンターとしても初めての試みです。3年の委嘱期間が終わった後にどういった形で定住に結びついていくのかは手探りです。また、応募する方も3年後どうなるかなんてわからないですよね。それでもいいと思っています。こればっかりは一緒にお仕事してみないと分からないと思いますので、まずは可能性を探ってみてほしいと思います。自分自身の能力を積極的に試してみたいという方とぜひ一緒に働けたらと思っています。
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