An intermediate support organization to develop human resources for art management professionals of Performing Arts, and to enhance their working environment.
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人形劇の調査、研究、普及を目的にさまざまな事業を展開している「現代人形劇センター」。そこに所属する、ろう者と聴者が協同して公演やワークショップを行う人形劇団「デフ・パペットシアター・ひとみ」の企画・運営部門の担当者を募集します。主な事業主催者も、全国の公立文化施設、自治体、学校、各種市民団体など多岐にわたり、公演形態も多様です。人形劇への興味・関心はもちろん、地域とのネットワークづくり、公演のあり方自体を自分でデザインしていくことに関心がある方はぜひ。公益財団法人 現代人形劇センターの理事長・塚田千恵美さん、代表理事・松澤文子さんにお話を伺いました。
A1組織的な成り立ちからお話しますと、「人形劇団ひとみ座」という創立68周年の劇団がまず最初にあり、ここが青少年に向けて国内で人形劇の魅力を発信してきました。その活動の一方、人形劇は子供たちに向けたものだけではなく、実は様々な魅力がありますので、こういった幅広い人形劇の魅力を、劇団の枠を超えて社会に広げていこうということで1969年に創立されたのがこの「現代人形劇センター」です。海外、国内、伝統、現代と幅広く視野に入れて活動しており、一種のプロデュース集団だと思っていただけると分かりやすいと思います。もともとの母体であった「人形劇団ひとみ座」と「現代人形劇センター」は、現在は姉妹関係のようなもので、それぞれ別々の組織になっています。
A2「デフ・パペットシアター・ひとみ」は「現代人形劇センター」が企画・運営している組織です。国際障害者年でもある1981年に立ち上がり、大きな特徴としては、ろう者と聴者が一緒にやっているということです。作品の内容も、ろう者と聴者両方のために作っています。「デフ・パペットシアター・ひとみ」が立ち上がった70~80年代は人形劇がとても盛んだったのですが、そこでの人形劇というのは、台本が主体で物語を台詞劇で進めていくものが多かったのです。しかし、それだけではない人形劇の魅力や人形の表現をどうしたら拡げられるか、取り戻せるかということを考え、音声言語に頼らない、ろう者の人達の表現に可能性を感じ、ろう者と聴者での作品創りをはじめたのが、この「デフ・パペットシアター・ひとみ」です。当時の人形劇界では衝撃的なデビューでした。
結成30周年記念作品「森と夜と世界の果てへの旅」
A3今回の募集は「デフ・パペットシアター・ひとみ」の専属の制作者になります。私たちは、いわゆる「売り公演」をしていくというよりは、それぞれの地域で、私たちの活動に共鳴してくださる方たちと一緒に公演を行っていくということに特色があり、活動の半分以上が「実行委員会方式」というもので成り立っています。具体的にいいますと、ひとつの地域を決めたら、その土地のろうあ協会や、手話サークル、地域で演劇や子育てに取り組んでいる方たちなど、どのような方々がいるかを調べ、その方たちにコンタクトを取り、実際に会いに行き、その方々同士を結びつけて一緒に公演を作っていきます。
だいたい1年くらいかけてツアーの準備をしますが、制作者が実際にその地域を周って、興味のある方とお話を進め、実際の公演までには2,3回行きますね。地域を周るだけの準備を1か月くらいかけて行い、実際にアポイントを取って訪問しますので、営業的な能力が必要です。またそれと同じだけ、事前のリサーチや、実際に現地でお会いした方から新たにネットワークを繋げていくための情報処理能力も必要だと思います。人が好きというのは絶対要件ですが、情報を掘り起こして、まとめて、判断していく能力の両方が大切ですね。
何か商品を売る営業の場合には「●●を売りたい」で分かりやすいと思うのですが、「デフ・パペットシアター・ひとみの公演をこの土地でやりたい」というのは、最初に聞いた方には、自分が何を求められているのか非常に分かりにくいので、それを理解してもらって、実際に会うところまでつなげていく熱意も必要だと思います。実際には、電話をかけてみると、これだけ会ってくれる方がいるというのも驚きますけどね。そういったことに喜びや楽しさを感じることができる方にはぴったりだと思います。
もちろん制作としての基本的な予算管理や公演本番の運営などもやっていただきたい内容になります。慣れてきたら、新しい作品やワークショップを創るときにも、「デフ・パペットシアター・ひとみ」の一員として内容にも意見やアイデアを言ってほしいと思います。
実行委員会会議
市民の人とのワークショップ
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手話は必要になります。ただ、入ってくるまでに手話ができる方というのはほとんどおらず、みなさん入ってから覚えています。ろう者のメンバーがいますので、その人たちと話すときは手話か筆談になるため、みんな手話をメンバーから教わっています。たまに手話サークルに通ったりする人もいますね。メンバーがいるときは週に1回「手話カフェ」をやっています。実際に仕事で実践的に使いながら、手話を覚えていきますね。
これまで制作で入ってきた人で一番早い方で、半年くらいで日常生活に困らないくらいに手話ができるようになった人はいますね。手話って面白いんですよ、英語みたいに丸覚えするのではなく日本語が元になっているので、毎日手話を使う機会があれば、かなりのスピードで上達しますね。ちなみに、「デフ・パペットシアター・ひとみ」の代表はNHKの「みんなの手話」の司会をやっていますから、いい先生が近くにいますよ。
防災人形劇「稲むらの火」
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この仕事は、誰かに言われたことだけをただやっていくだけの仕事ではありません。もちろん、最初はいろいろ教えますが、その後は個人の個性や発想力によって、自分でいろいろと考えて動いていくような仕事になります。前任者の作った繋がりを引き継ぐこともありますが、その人ならではのネットワークを作っていく面白さもあり、自分の良さや自分らしさを活かせるのではないかと思います。地域とのネットワークづくりに興味がある方は楽しいのではないでしょうか。
経験がなくても大丈夫です。この仕事は、営業ができるとか、助成金の申請が上手いというスキルとは別に、好奇心が強くて、こだわりや興味のある人が向いているかもしれません。3.11以降、地域とのつながりのあり方も少し変わってきているな、というのを実際に感じるのですが、各地域で若い人たちが、自分の地域でいろいろとやっていこうとする動きがあります。そういう人たちと繋がることで、これから新しいことが起こっていくんじゃないでしょうか。
また、この仕事を通じて身に付く、地方で活動している方々とのネットワークや知識は本人にとっての財産になると思います。また、ここで働いて身に付く、ゼロから組織していくスキルは、この業界に限らず何にでも使える強力な武器になり、どんな場面でも通用するものだと思います。
実行委員会との舞台仕込み作業
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現在「デフ・パペットシアター・ひとみ」の制作としては2名います。事務所は元住吉の駅からブレーメン通りという商店街を抜けた住宅街のなかにあります。事務所のすぐ隣は稽古場になっていて、仕事をしながら歌を覚えてしまうくらいに近いですね。また、事務所の下は「ひとみ座」のアトリエがあり、別棟にも稽古場があります。新しい作品を創っていて稽古場を覗きに行くときには、事務所と稽古場が離れていないので便利ですね。
4年目の制作の大里は9月にKAATで開催された「障害×パフォーミングアーツの可能性」というシンポジウムに登壇しました。彼女はこの仕事に就くまでは、アートマネジメントの勉強をしていたわけでも、手話をやっていたわけでもないのですが、こうして今は自分の言葉で活動を多くの人に発信し、ユニークな地域の団体を掘り起こして、ネットワークを結んでいっています。
「デフ・パペットシアター・ひとみ」での仕事を通じて、ぜひ自分の言葉を発信していく人にもなってほしいと思います。私たちが「デフ・パペットシアター・ひとみ」を立ち上げた後、聴こえない人たちが自分たちのアイデンティティを求めて自分たち自身でグループを作って活動するということが増えたんですね。そしてこれからまた、聴こえる人と聴こえない人が一緒に活動を行うということが再び盛り上がってくると思うんですね。ここで自分の道をぜひ作っていてほしいなと思います。
実行委員会との集合写真