An intermediate support organization to develop human resources for art management professionals of Performing Arts, and to enhance their working environment.
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12月4日(日)、Explatでは札幌で「舞台芸術のアートマネジメント専門人材の人材育成と労働環境を考えるシンポジウム ~統計・調査から分かる労働環境とこれから必要な人材育成~」を開催いたしました。
全国6都市で開催されるこのシンポジウムですが、開催ごとに議論を積み上げることを目指しております。
日本アートマネジメント学会全国大会と同日開催となった札幌会場では、前週にシンポジウムを行った京都会場での内容を踏まえつつ、全国各地から集まった研究者や地元の舞台芸術関係者が参加し、議論を深めております。
今後のスケジュール(福岡/仙台/名古屋/東京)詳細は、こちらをご覧ください!
以下は、札幌会場でのシンポジウムの話題から一部抜粋したものをお届けします。
ファシリテーター:植松侑子(特定非営利活動法人Explat理事長)
パネリスト:
片山泰輔(静岡文化芸術大学 文化政策学部 芸術文化学科 教授/大学院文化政策研究科長)
小室明子(演劇制作会社 ラボチ)
閔鎭京(北海道教育大学岩見沢校 芸術・スポーツビジネス専攻 芸術文化政策研究室 准教授)
綿江彰禅(一般社団法人 芸術と創造 代表理事)
主催:文化庁、特定非営利活動法人Explat
共催:北海道教育大学
制作:特定非営利活動法人Explat
札幌では、組織における専門的職員の役割変化、新卒者・他業種からの転職者の人材確保、そのために舞台芸術業界が整備すべき点について、主に議論されました。
(1)指定管理者制度の導入について
・指定管理者制度や入札制度等による行き過ぎた経費削減が、人件費下落の原因を招いているのではないだろうか(参加者より)
・本来の指定管理者制度は、公立文化施設の設置目的を効果的に達成するために制度を導入できるという規定。しかし経費の削減を目的としているところが8割程度あり、誤用されている。劇場法では劇場のミッションが明確に強調されている。地域住民が、劇場が公益的な存在だと気づく状況が生まれれば、設置目的は効果的に達成されているといえるのだが、なかなかスムーズには実現していない。実現の動きを加速させるため、11月の文化審議会での緊急提言などで強調している(片山さん)
・アートマネジメント人材は、大学教員や医師と同じように高度で専門的な仕事をしている。しかし自治体系の財団は、専門家集団として組織が作られたのではなく、自治体職員の受け皿となっている。報酬面でも、公務員の7掛けなどが定着しているところも多い。行政の外郭団体として安定しているから働いている、という人がいるのも実態。いかにプロ集団に変えるかが重要(片山さん)
・地域版アーツカウンシルを推進する流れの中で、自治体が作る指定管理者への仕様書の作成にアーツカウンシルが関わることも期待したい(片山さん)
(2)アートマネジメント専門人材の役割変化と人材育成
・劇場法によりある程度の方向性が示され、求められる人材像が明らかになりはじめていると思うが、社会環境の変化により求められる人材がまた変化するかもしれないと感じている。その場合、人材育成という時間のかかる活動を社会の変化の中で達成する際に、異業種から学べることが多いのではないか。(参加者より)
・求められる人材像の変化という点でいえば、札幌の民間団体の傾向でも、以前は事務的な部分を担う人として制作者を扱っていたが、現在はお金になることを求められることがより強くなった。急にファンドレイズを制作者に求めても、そのための準備もできていない中で、いきなり対応するのは無理ですよ、と感じる部分もある(小室さん)
・過去を振り返ると、日本芸術文化振興会、企業メセナ協議会などができた90年代は、建てられた文化施設をどう運営するか、助成金獲得のためのハウツーといった面が語られたが、その後アートマネジメント人材には、公演単体ではなく、継続する機関の運営という部分がより強く求められるようになった。社会にどう貢献し、支えてもらうのかといった、経営にかかわる部分を、館長以外も求められているようになっている。やりたいことをやらせてもらえる環境が降ってくる時代ではない。組織のミッションを意識して、動かしていく人が求められる(片山さん)
・2006年に札幌に初めて来た時、舞台芸術団体のメンバーがみんなノルマを背負っていて、ギャラも払われていないことにびっくりした。アーティストがマネジメントと分離していない。集客、マーケティングができるようになるためにはマネジメントを専門職化することが大切だ。ただし、アーティスト側とマネジメント側のお互いの認識違いが生まれないように、注意が必要。アーティスト側は、マネジメント側に口出されることを是とせず「手足になってくれれば」という認識に立つことも少なからずある(閔さん)
・以前はマーケティングを重点的に教えていたが、最近はそもそもアートがなぜ社会に必要なのか(アートの存在意義)に着目している。その目を獲得するのには、時間かかる。また、現場感覚を教育に入れていくことは重要。でないと、独りよがりになってしまう(閔さん)
(3)アートマネジメントを学ぶ学生はなぜ就職先として舞台芸術業界を選ばないのか
・アートに関わりたいと思って入学してきた学生たちも、3年目の終わりくらいで就活をすると、現実が分かりはじめ、就職先としては文化財団等を選ばなくなる。特に優秀な学生ほど、いい企業の内定が取れるので劇場などには就職しなくなる。また、学生時代に現場経験を得た人も、現場の状態を知っているからこそ行かなくなることも(片山さん)
・現在の舞台芸術業界の採用は欠員補充が中心になっており、学生が卒業する直前に募集が出ることも多く、その時には優秀な人材はとっくに就職先が決まっている。学生が就職活動を始める段階で、いかに大手企業と競合し優秀な人材確保を行っていけるかが舞台芸術業界の未来にはとても重要(植松)
・また、学生の志向性の変化にも意識が必要。昔は「好きだからやってみます」と、とりあえずこの業界に入ってくる人材もいたが、今は職業としての安定性などが確保されていないと選択肢に入らない。もっとドライな感じがしている。現場も認識を変えないと。(植松)
・学生は将来への不安があるので、芸術に全て注ぐということがない傾向。距離感の取り方が以前はと違う。なりたいという意思が強く、何が何でも芸術業界に入るという学生もいる。ただ、親のことをすごく気にしている学生が多く、まずは民間企業を受ける。財団の募集時期を変えない限り、優秀な人材は取られてしまう(閔さん)
(4)他業種から入ってくる人材をいかに確保できるか?
・転職してこの業界に入ってくる入口も現状では十分に整備されていないと感じる。特に経営陣の人事では「村長は村人から選ぶ」という意識が働きやすく、他業種の人が経営に入りづらい面もあるのでは。「最初に入りづらい(新卒の扉)」「途中で入りにくい(中途採用の扉)」という2つの扉の両方に問題がある。良い人材がつねに入ってきて、中にいる人材が切磋琢磨して育つ環境にしなくてはならない(植松)
・異業種から参入してくる人は重要。大手の企業等できちっとしたマネジメントを行っていた人が芸術団体に入り、改革していった例をいくつも見ている。やろうとすればやれる。(片山さん)
・マネジメント専門人材の仕事の範囲はどんどん拡大し、今ではステークホルダーのマネジメントまで広がっている。芸術への理解だけではスキルとして不足している。アートマネジメントを業界の人が学ぶことも重要だが、マネジメントや専門的なスキルを持っている人が他業界からも入ってもらうようにしないと回らない。価値観やスキルが多様な人をどう業界の中に呼び込むか。業界内で働く人のダイバーシティをいかに確保するか。そのためには、アートマネジメント系の学生は卒業後に業界外に出て行って、スキルを付けて戻ってくるのも良いと思う(綿江さん)
・行政でも人事異動でいきなり全く門外漢な人が担当になると現場が抵抗感を持つように、民間から来る人にも「この業界の人ではないから」と同じようなことが起きるかもしれない。どう現場が他業界からも学ぶという意識を開いていけるかも重要な点の一つ(植松)
(5)舞台芸術業界で取り組むべき働き方改革
・相当真剣にならないと。人件費単価を上げるためにも、労働生産性を上げることにも、真剣に取り組む必要がある(片山さん)
・長時間労働の傾向が統計からも明らかなので、労働時間を抑える、ある程度の時間的制約の中でパフォーマンスを出すことが必要。他の業界も、徹夜が当たり前の時代から転換が行われている。それは、「労働環境がちゃんとしていないと、ちゃんとした組織ではない」という外圧がかかるようになったため。例えば経産省系の助成金は、ワークライフバランスが守られているかをチェックされる。しかし芸術系団体はその意識が薄いことが多い。強制的なルールも必要では(綿江さん)
・日本でもオーケストラ団体はユニオンを持っているし、海外は職種ごとにユニオンがある。アメリカのアートマネジメントでは、労使関係をどうするかが重要テーマとなっている(片山さん)
・民間・公共を問わず、その人の裁量でしかできない仕事が大半占めており、ノウハウ引き継ぎの課題がある。いかに仕事を体系化するか、言葉にするかが重要(小室さん)
・人材育成について、優秀な人材をさらに鍛えるという点は考えやすいが、どのように下を底上げしていったらいいのか(参加者より)
・底上げのためには給与制度の改革も必要。良いパフォーマンスを出す人には給料を厚く、パフォーマンスが出せない人にはシビアに対応する必要も。良いパフォーマンスを出せる人が沢山出てくることでて、組織として目指すところが分かる(片山さん)
・底にいる人材はそもそもやる気がないのか、やる気はあってなんとかそこからステップアップしたいのかを見極め、その人の潜在能力いかに見つけるかが重要(閔さん)
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次は福岡です!すべての会場でのシンポジウムが終わった後、今回の労働環境実態調査の分析結果を公開します。
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